フィルムのクロスプロセス
この投稿は「クロスプロセス・ガイド(xpro.taken.jp)」としてサイト公開(2009年〜)していた内容のうち、フィルムのクロスプロセスについての情報をまとめたものです。
「デジタル処理によるクロスプロセス」は別の記事にしています。
ヘンな色を作る写真術
銀塩写真はカメラで撮影したフィルムを現像して、そのフィルムから写真プリントを作ります。写真の発色は、フィルム毎に決められた現像方法によって決定されます。
通常はきれいな発色を得るためにフィルムに合わせた最適な現像処理を行うのですが、クロスプロセス(クロス現像)は故意に間違った現像処理を行い、正しい色を出さないようにするテクニックです。
そして、本来とは違う正しくない色が、鮮やかすぎたり変な色になってしまったりするために、なんとも不思議な雰囲気を醸し出すことがあります。
その発色効果はフィルムにより様々であり、露光時間や現像、プリントによっても変化します。
クロスプロセスとは
(通常の)フィルムの現像処理
撮影したフィルムを現像して、現像後のフィルムから写真プリントを作ります。フィルムにはネガとポジの2種類があり、それぞれ専用の現像方法が決められています。
- ネガ・フィルム
- 写真プリントが安価に作れ、露光の過不足による失敗が少ないため一般的に広く使われています。
- ポジ・フィルム
- 現像したフィルムは商業印刷用の写真原稿として使用されます。ネガ・フィルムよりもはっきりした色彩が得られるので、写真作品用としてもよく使われます。
クロスプロセス
フィルム毎の決められた現像方法ではなく、ネガ・フィルムをポジ現像、ポジ・フィルムをネガ現像することを、クロスプロセス(クロス現像)と呼びます。
クロスプロセスには次の二通りの現像方法があります。
- ネガのポジ現像
- ネガ・フィルムをポジ現像します。現像後のフィルムは、ポジ(階調が正しい映像)になりますが、変な階調や色になります。
- ポジのネガ現像
- ポジ・フィルムをネガ現像します。現像後のフィルムはネガ(色、階調が反転している映像)になりますが、変な階調や色になります。このネガから変な色のプリントを作ります。
クロスプロセスを受け付けているDPE店(フィルム現像や写真プリント業務をおこなう店舗)でクロスプロセスを依頼すれば、それぞれのフィルムに合った現像方法で処理されます。ただし、一般には正しくない現像方法なので、しっかりと「間違った現像」をお願いしておいた方が、「正しい現像をされてしまう」というトラブルを防ぐことができるでしょう。
フィルムテスト
クロスプロセスは、フィルムの決められた現像方法でないのでフィルム感度が変わることがあります。
正しい露出で撮っているはずなのにクロスプロセスすると暗くなったり、明るくなりすぎたり……ということが起こります。
そこで、写真の明るさをちょうど良いものにするためには、フィルムのテスト撮影をしてフィルム感度を調べる必要があります。
また、クロスプロセスで得られる色も、カッコイイと思うか、気持ち悪いと思うかは、フィルムによるのでこれもテスト撮影で発色を判断することができます。
まずは、写してみないと何も分かりません・・・
テストに適したカメラ、レンズ
マニュアル・モード(シャッターと絞りを自由に組み合わせることができる)が付いているカメラであれば、かんたんにテスト撮影をすることができます。使用レンズは、開放絞り~最小絞り値までの絞り値の幅が広いレンズ(単焦点標準レンズなど)が使いやすいとおもいます。
露出の調整の幅が少ないカメラやレンズはテスト撮影には不向き、露光量の調整ができないトイカメラなどはテスト撮影が不可能です。
フィルムのテスト撮影の方法
レンズの絞り値の中間あたりが、フィルムの規定感度で適正露出となるようにシャッター速度を設定して、開放絞り~最小絞りまでの絞り値で同じ被写体の写真を撮り、結果を比べます。
仮に、ISO100のフィルムのテスト撮影をするとします。開放絞りF2.8~最小絞りF22のレンズを使った場合は、F8で規定の感度(ISO100)で適正露光になるようにシャッター速度をセットして、シャッター速度固定のまますべての絞り値で写真を撮ります。
そして、撮影したフィルムをクロスプロセス(現像)します。現像後の仕上がりがネガの場合はプリントもします。
その結果、+3露出オーバー ~ -3露出アンダーまでの明るさが違う7枚の写真が出来上がり、この中で好みの写真を探し出せばクロスプロセス時の最適フィルム感度が決まります。+2オーバーの写真が良ければ、ISO100から2段階感度が低い(逆に考えると、ISO100で撮ったときに、-2アンダーとなる)ISO25となります。
「ISO25では感度が低すぎる」というときは増感現像という方法もありますが、増感現像をすると粒子が荒れ、コントラストが強くなるので注意が必要です。
オーバー側をより多くテストしたいならF11を基準に、アンダー側を調べたければF5.6というふうに必要に合わせて基準絞りを変えていきます。
現像とプリント
実は、クロスプロセスにおいての最大の難関は『クロスプロセスを頼める現像所』を見つけることです!
クロスプロセス自体は普通のネガ現像やポジ現像ですが、ほとんどのDPE店(現像所)では断られるはずです。しかし、写真に関する処理を専門業務としている「プロラボ」などで、クロスプロセスを引き受けてくれるところもあります。
『クロスプロセスを頼める現像所』リンク
※現像所の情報は2009年当時のもので、現在もクロスプロセスができるかは不明です。
ネガポジ現像、ポジネガ現像の2通りのクロスプロセスを行っているかは現像所によります。
クロスプロセスしたフィルムのプリント
ネガをポジ現像したときは、ポジフィルムになります。プリントする場合はポジプリント(ダイレクトプリント、リバーサルプリント)をします。プリント時に多少の補正はできますが、色はフィルム上に見えているそのままの色となります。
ポジをネガ現像したときは、ネガフィルムになります。階調が反転しているため、フィルムから写真プリントを作る必要があります。プリントは通常のネガプリントです。
ネガフィルムから写真プリントを作るときは、『色を正しく見せる』ためにカラー補正という工程があります。クロスプロセスは『色を正しく見せない』という目的で正しくない現像が行われているため、カラー補正をしてもきれいな発色になりませんが、カラー補正なしのプリントとは色調が変わってしまいます。
そこで、クロスプロセスしたネガフィルムをプリントするときには、『カラー補正なし』という注文をしましょう。さらに詳しく、「クロスプロセスをしたカラーフィルムなので、カラー補正をしないでプリントしてください」と依頼するのもいいでしょう。
写真プリントの裏側をみるとカラー補正値が印字されていることがあります。補正なしは、< N N N N >、補正ありは、数字が書かれています。
現像所による仕上がりの違い
フィルム現像は化学的処理なので、現像液の劣化状態や温度、時間などで微妙に違いが生じます。プリントはデジタルプリント、銀塩プリントなど方式の違い、プリントする紙の違い、補正が入るときの補正具合などで同じネガからのプリントでも結果が異なります。
同じ現像所(DPE店)で同じ処理をするならばフィルムの仕上がりにほとんど差はないと思いますが、違う現像所だと同じように撮った写真でも結果が変わってくることが考えられます。特に、ネガフィルムからのプリント時の色の差はあるものだと考えておいた方が良いでしょう。
DPE店による仕上がりの違いについて
次の3枚の写真は、同じフィルムを違うDPE店でプリントしたものです。店によって驚くほど違いがあります!
使用フィルムは Fuji PROVIA100F、フィルム現像は、堀内カラー(ネガ+1増感現像)で、プリント時の補正は「補正なし」で注文しています。
フィルムテスト/結果
旧サイト「クロスプロセス・ガイド」では各フィルム毎に段階露出、増感現像をおこなって、仕上がりの違いについて報告をしていましたが、すでに販売が終了しているフィルムがほとんどなため、これらのフィルムテスト結果についてはこのページには転載していません。
もし、興味あるかたがいらっしゃれば、「(保存版)クロスプロセス・ガイド」の「フィルムテスト/結果」をご覧ください。ただし、モバイル対応していないサイトなのでパソコン画面でないと快適に見ることができないとおもいます。
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