Kindle本を出版しました!

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Kindle本とは、アマゾンの Kindleストアで販売される電子書籍のこと。Amazon製の電子書籍リーダーのほかに、スマホやタブレットでも読むことができるクロスプラットフォームの電子書籍です。また、Kindleストアでは出版社でなくとも個人で出版することもできます。

Kindle本が読める端末
メーカー/OS デバイス アプリ
Amazon Fire, Kindle, Paperwhite, Voyage
Apple/iOS iPhone, iPad Kindle読書アプリ
Google, 他/Android Android端末, Nexus Kindle読書アプリ
PC/Windows PC Kindle for PC
Apple/Mac OS X Mac Kindle for Mac

Kindle本の制作と出版

ふと電子書籍を作ってみたくなり、とりあえず一冊出版できたので記録を兼ねてレポートします。細かいところはだいぶ端折りましたが、長文です。

(一部を加筆訂正済み。なお、手続き等については、当時と状況が異なっている可能性があります)

アカウント作成と米国への免税申請

Kindleダイレクト・パブリッシングのサイトへ行き、出版者アカウントを作ったのが、2014年6月16日(ログインして、アカウント情報の「アカウントの詳細情報のコピーを受け取るには、ここをクリックしてください。」でメールを受け取るとアカウント作成日が書かれている)。そしてサイトに書いてあることを 熟読、熟読、熟読……

アカウント開設は簡単にできた。
KDPサイト

Kindleダイレクト・パブリッシング(以後、KDP)は米国アマゾンと契約を結ぶので、本が売れて収益が得られた場合は、アメリカに所得税を納める必要がある。しかも、住所地である日本にも所得税を納める必要があるとのこと。しかしこれでは、二重課税になってしまうので、アメリカに免税申請をすればそちらの税金は掛からないという。手続きなしでも出版はできる(ただし両国に税金を払う)みたいだが、翌日、書類をFAXで送信した。

6月26日(送信9日後)の午前6時に自宅FAXに、免税申請に必要な EIN番号が書かれた書類が返送されてきた(7月26日に郵送でも書類到着)。すぐに KDPのアカウントから「税に関する情報」を更新して、7月14日に免税手続きが完了。

現在は、米国への免税申請は必要ありません。日本国内の売り上げについては米国への納税はなくなっています。ただし、米国内の売り上げ分は免税手続きをしないと30%源泉税が徴収されます。

撮影

当初は、2013年から通いだした青木ヶ原樹海の写真で作品集(写真集)を作ろうと考えていた。2013年はパノラマ写真しか撮っていないので、すべて2014年の撮り下ろしになる。

本の制作は撮った後で考えようと、とにかく写真を撮り始めた。去年は何度か訪れているが、まだまだ新鮮で何を見ても撮っても楽しい。
樹海は世間で思われているほど危ないところではない。テレビや雑誌がおもしろおかしく適当な報道や記事を書いていたから、危険なイメージが出来上がったのではないかな? 道を歩いて行く限りはまったく安全。真夏でも涼しく気持ちいいハイキングだ。

しばらく撮ってみて、写真集もいいけど、それ以外に「樹海を歩いた話」が書けるかもと考えて、何日かはコースを設定して歩いた。写真集と「樹海を歩いた話」で、電子書籍の2つの形式、リフロー型と固定レイアウト型の書籍を作ろうと考えたのだ(作り方はともかく2種類の形式があることは勉強した)。

7月〜8月に撮影して、本の制作は9月、それで10月に出せればいいかなと想定していたが、何やらいろいろ予定が押して、本の制作に掛かりだしたのは10月に入ってからだった。この頃から、年内出版に目標が変わり、樹海を歩いた話に『樹海ハイキング』とタイトルを付けた。

このタイトルはちょと分かりにくいかな、とも思っている。「ハイキング紀行」みたいにしたほうが良かったかもしれない。将来、タイトルを変えるかもしれません。

本の制作開始

電子書籍が紙の写真集と比べて最も違うことは「写真の大きさ」だと思う。写真を見るときにある程度の大きさがないと伝わらないものがある。できれば大きく見て欲しい。

という思いで、写真集はタブレットで見るのを前提にした固定レイアウト型の電子書籍、もうひとつの『樹海ハイキング』は写真が多く掲載されているリフロー型にして、大きな写真が文章と並んで見られるようにしようと考えた。そこで、最終的な写真の具合とレイアウトを見るために、確認用のタブレットが必要になってきた。

タブレット購入

初めは、所有人口が多くてディスプレイの性能の高さから写真を見るのに向いている、iPadを購入するつもりでいた。iPadでも Kindle本は読めるので特に問題はないだろうと思った。

2014年秋に発売されたタブレット(発売順)
発表, 発売日 解像度
iPad Air 2 10/17, 10/22 2,048 × 1,536
Fire HDX 8.9 9/18, 11/4 2,560 x 1,600
Nexus 9 10/17, 11/29 2,048 × 1,536

しかし、Kindleパブリッシング・ガイドラインに合わせて正しく作るなら、Kindle端末で確認しながら作るのがいいだろうと思い直し、Kindle端末で最も画面が広い Fire HDX 8.9 タブレットを購入した。

このタブレットで、いろいろな電子書籍の写真集を見ていたら、絶対に正しい方向で見ることができないページレイアウト、変則的なページ送り方向、写真が分割されて表示されるページ、写真の端に隙間(白線)が入っている本、など不思議な間違った作りの本が何冊も見つかった。

● 絶対に正しい方向で見ることができないリフロー型書籍
strange-layout-01

画面ロックをすれば正しく見えなくもないけれど、本を読むために何かしらの操作が必要になるのは配慮が足りないと思ってしまう。それに画面の向きを制限するとリフロー型(可変レイアウト)である意味が少なくなる。

● 変則的なページ送りになる固定レイアウト型書籍
strange-layout-01

電子書籍といえども伝統的なページ送りの方向は維持すべきだと思う。ページは左右に送るという習慣があるし、電子書籍はパッとみてページ送りの方向がわからないからなおさらだ。

これらの本は実機確認をしていない(あるいは、読む人の立場で考えていない)のだなと思われて、持っている人が多いと思われる iPadでも確認しておくのが無難だろうと、iPad Air 2 も買うことにした。結果的に、この判断はすごく良かった。実際に Kindle端末と iOSアプリでは、見える画質が全然違う! Kindle Fireではとても美しく見える写真でも、iPadだと非常に低品質にしか見ることが出来なかった(ハードウエアでなくソフトウエアの性能差による)。

本の制作

文章を書かねばならない『樹海ハイキング』のほうが難易度が高いので、こちらから取り組むことにした。これさえ終われば写真集のほうは楽々だろう(とその時は考えていた……)。

KDPのガイドラインを読むとHTMLでも作れると書いてあったので、そんなに難しくはないのではないか?と思っていたが、はて?実際には何から手を付ければ良いかまったくわからない。ガイドラインに書いてある事はなんとなくわかるものの、作り方までは書いていない。ネットで調べてもあまり情報がない。そこで教本を何冊か買って読んでみた。

読んで役に立った本

AmazonKindleダイレクト出版 完全ガイド 無料ではじめる電子書籍セルフパブリッシング

「知る+作る+売る」すべての解説がされている。通して読んでみて、執筆から出版までの全体像がよくわかった。とくに原稿執筆についての章がわかりやすく、本を書くという実作業に、3ヶ月以上かかることはほとんどないという著者の持論をもとに、1ヶ月ごとにどんな作業をしていくのか、また書けないときはどうするのかといったことが、詳しく書かれていてとても参考になった。

一冊作ってみた後に読み返してみると、なるほどその通りだ!ということがたくさんあった。ただし、ePub や画像の容量については以前の制限サイズが書かれているので、注意が必要。出版後にその本自体の改訂ができない印刷本なので仕方がない。

日本語表記ルールブック

文章を書くときふと迷ったら…と表紙に書かれている。ふとどころか思いっきり迷ったので購入。母語である日本語だが、改めて正しい表記はなにか?と考えるとよく分からない。文章を縦書きにするとき、数字はどう書くのが良いのか悩んだので、数字の表記についての解説は大いに参考になった。

数字を書いたものを並べてみて、自分として読みやすいものはどれかという視点で決めた。
数字の表記いろいろ

Kindleで本を出す、テンプレートで、3日間で書いて出版・実用本の書き方 桜風涼の実用本

Kindleストアの無料本ランキングで見つけたのでダウンロードしてみたら、プロの書き手である著者のアドバイスが詰まったとても良い本だった。軽快な文章で読みやすく、しかも内容が濃い。紙の書籍で作家に入る印税とKindle本の売り上げを比べてみたり、他では読めない話もあり興味深い。実際に執筆に使っているソフトウエア(一太郎とScrivener)について書かれていてこれは大いに参考になり、後に推薦ソフトを購入した。

この本は無料セールでダウンロードしたが、これがきっかけでこの著者の別の本を買った。ということで無料セールは実売に結びつくということを自分の体験を通して理解できた。

制作ソフト

Scrivener(スクリブナー)

Scrivener - Writing Software

『実用本の書き方』で紹介されていたので、App ストアでMac版を購入。初めてのアウトラインプロセッサで、どうやって使えば良いか皆目分からず(そんなのでよく買ったなとは思うが)ネット検索で使い方を調べた。たくさんの人が作ってくれたサイトを熟読して学習。

とりあえず使えているが、多機能なソフトなので全然使いこなせているレベルではないと思う。(2016年3月に解説本がでました)。

一太郎

購入したのは「一太郎2014 徹」ですが、現在は新版になっています。

ジャストシステム「一太郎2016」 通常版

『実用本の書き方』で日本語の縦書きを行うには、一太郎がないと駄目ですと、イチオシで紹介されていたので、教本も合わせて購入した。これだけは Windows版なので、Mac の Boot Camp(MacでWindowsを起動させる機能)でWindows 7 を起動させて使っている。

Scrivener で原稿を書きため、最後は一太郎で ePub を完成させようとした。しかし、画像がうまく扱えないために使用を断念。でも ePub の書き方は一太郎で少しは学習したので無駄にはなっていない(と信じたい)。

Sigil(シジル)

sigil - The EPUB Editor

ePubエディター。一太郎で画像がうまく配置できなかったので、これでソースコードの修正を行うことにした。最終的には、一からソースを書き直して、Sigilで本の制作を行った。

『樹海ハイキング』のページレイアウト

前にも書いた通り、この本は写真が多く掲載されているリフロー型にしようと思っていた。文章:写真のパワーが50:50くらいになるように。文章力のなさを写真力で補えないだろうかと期待していたのもあるが……。最近の高精細ディスプレイなら、写真がどーんと大きい方が良いだろうと思ったわけです。

リフロー型は画面を横にしても縦にしても、タブレットでもスマホでも、レイアウトが画面によって変わるのでレイアウトは単純なものにした。

初版(v1.000)のレイアウト

タブレットの高精細ディスプレイを生かせるように、写真を大きく使った
v1000-layout

Kindle本の画像をダブルタップすると大きく表示することができるが、それをいちいちやるのは面倒。それに、そういうことができることを知らない人もいるかもしれない。では元から大きい写真なら良いのでは?というシンプル発想だったのだが、これは駄目だった。

制作中から iOS用の azk ファイルで見ると画像が非常に劣化して見えるという問題があり、それが Kindleプレビュアだけの表示か、販売後のデータもそう見えるのかわからなかったので、とりあえず出版して販売されている本を購入して各デバイスで見比べてみた。

Fire は大丈夫だったが、iPadでは画像が劣化して見えた(Kindleプレビュアによる見え方と同じ)。ただ、iPhoneでは画面が小さいためと思うが、劣化しているようには見えなかった。

これではタブレットの高精細ディスプレイを生かした本とはいえず、iOS(Androidも)のタブレットで見たときは、単に劣化した写真画像を大きく見せる本になっているので、即日発売中止にして対策を考えることにした。

次版(v1.001)のレイアウト

Kindle端末以外の見え方に配慮して、写真を小さく表示するようにした
v1001-layout

当初は、ソースコードの書き方がどこか間違っていてそういうことになってしまうのか?と思っていたので、KDPサポートに問い合わせてみたが解決せず。現状できることといえば、劣化が気にならないところまでサイズを小さくすることだけだった。でも、ダブルタップすれば劣化が分かる大きさに拡大されてしまうので、根本解決にはなっていない。

もうひとつ問題があり、それは各デバイスで画面の明るさが違うことだ。iPadは Fire に比べて写真が暗く見える(共に明るさ自動調整の状態で判断)。見た目大きな写真ではディテールで雰囲気を補ってくれていたのだが、写真が小さいと細部が見えず、Fire 以外では暗い印象になってしまう。

これも仕方がないので、Fire ではやや明るめになるが iPadを基準に再調整した。

ロイヤリティと売上

本の販売額をどう決めるか?

中身の見えないもの(Kindle本のサンプルは冒頭10%までしか読めない)に対して人はいくらまでなら払うか? という切り口で考えると1円でも高いのではないか? と思った。

つまり、
中身が見えない = 価値が判断できない ≒ 価値がない = 0円

では、この本を読んでいくらなら損したと思われないか? と考えてみた。素人が書いたものなので、せいぜい300円くらいかな。かなり自画自賛(含むモチベーション)な価格ですが。

KDPのロイヤリティ

KDPのロイヤリティ(著者の取り分)は、35%と70%の2種類があり、それぞれに適応条件が違う。70%にするには、KDPセレクトに登録する、KDPの独占販売を認める、配信手数料が収益から引かれるなどの条件が課せられるが、日本の KDPはデータサイズが10MB 以上のものについては配信手数料が0円、他のストアで売る予定もないので70%ロイヤリティにした。
ただし、日本以外では配信手数料が引かれるので、同じ価格ならば何冊売れても収益は0になってしまう。それで海外価格は少し高めに設定しておいた。海外で売れるとは思わないけれど。

一冊売れると
300円 × 70% = 210円

仮に1,000冊売れても、21万円にしかならない。写真撮影は機材費、交通費が大変掛かるという事情があり制作費を考えると、収益を出すのはかなり難しいことが分かる。

現在(2016年)はすでに出版を停止しています。購入いただきありがとうございました。